タングステン・モリブデン工業会

  3.用途

Ver 2.0
2006-6





 

3.用途

3.2 モリブデンの用途

3.2.1化成品

 1890年代終わり:モリブデンは、ある種の化学品および染料に使用されるようになった。(1)
 現在も各種モリブデン酸塩類として、触媒、顔料、肥料、薬品等に使用されている。

3.2.2鉄鋼用添加材料

1894年:  フランスにおいて、初めて鋼への添加元素として使用された。この合金鋼の用途は、装甲板であった。(1)
1898年:  自硬性のモリブデン工具鋼が発売された。(1)
1914年
(第1次世界大戦):
 高速度鋼中のタングステンの代替物および軍装甲用鋼板の合金元素として、アメリカ合衆国でモリブデンの新たな用途を生み出した。(1)
 現在、モリブデンは、高速度鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、合金工具鋼等の添加元素として広く使用されている。

3.2.3照明工業用材料

1910年:  白熱電球のフィラメントサポートとして実用に供された。(1)
タングステンフィラメント製造用のマンドレルとしてモリブデンが使用されるようになった。
 現在、白熱電球、放電灯におけるタングステンフィラメントや電極の補助部材として、サポート、アンカー、石英ガラス用シール材料等に広く使用されている。
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3.2.4高温構造用材料

1946年: アーク鋳造法が初めてモリブデンに適用された。(1)
1950〜1965年頃: 核開発と宇宙時代がほぼ同時に到来したため、高融点金属研究の黄金時代となった。(1)
1950〜1960年代  高強度モリブデン基合金を開発するため、(1)加工強化、(2)固溶強化、(3)析出強化の3種類の金属学的強化機構が利用された。最初に実用化された合金は、Mo-0.5%Ti合金であった。(1)
 Mo-W合金も開発された。Mo-W合金は、宇宙時代初期には未合金モリブデンでは、融点が不足するロケットノズルに使用された。今日もW合金が使用されるのは、600℃の高温で溶融亜鉛のハンドリングに使用されるMo-30W合金である。
1954年:  高温用構造材料として、TZM合金(Mo-0.5Ti-0.3Zr-0.03C)が、Climax社により開発された(1)。本合金は、活性金属炭化物の生成による析出強化と活性金属の固溶強化との両方により強化されている。TZC合金も同様である。
1955年:  モリブデンへのレニウム添加による延性改善が発見された。(1)
1959年:  液体アルカリ金属に対するモリブデンの耐食性が公表された。(1)
1960年:  モリブデンの表面窒化が、著しい高硬度を示した。(1)
1960年:  高温用構造材料として、Mo-TZC合金が、GE社により開発された。
1966年:  高温用構造材料として、窒化ハフニウム含有合金が開発された。(1)

 モリブデンは、高温用電気炉の発熱体、レフレクター等や電気炉構造部材、セラミックスや磁性材料燒結用トレイ、セッターおよびその他構造部材として広く使用されている。

3.2.5半導体関連用途

1950年:  モリブデン−マンガン法が、セラミックスと金属の鑞付けのために開発された。(1) 
 現在も電子部品の鑞付けに広く使用されている。
1970年代:  Si半導体搭載用モリブデン板が使用された。モリブデンの熱膨張係数がSiに近いためである。(2)
1980年代:  集積回路のモリブデンゲート形成のため、モリブデンスパッタリングターゲット(純度3Nから6N)が使用された。(2)

 モリブデンがゲート材料として選択された理由は以下の通りである;
 (a)電気抵抗が小さい、熱抵抗が小さい、(b)耐熱性が優れている、(c)基材のSiO2膜への密着性のよい、(d)珪素と近い熱膨張係数をもっている、(e)薄膜状態で内部応力が小さい。
 モリブデン硅化物MoSi2も、集積回路の拡散バリアーとして使用されている。
1990年代:  半導体放熱基板材料として、モリブデン−銅複合材料、銅−モリブデン−銅クラッド材料が使用された。
 モリブデンの低熱膨張と銅の高熱伝導特性を利用したものである。同種の材料にタングステン−銅材料がある。熱的特性は、タングステン−銅に劣るが、圧延や打ち抜き可能なため、コスト面で優位である。

3.2.6その他用途

1960年代:  電子レンジのマグネトロン陰極部の上下エンドシールド(ハット)およびリード棒にモリブデンが使用されるようになった。
1960〜1970年代:  モリブデンガラス溶融電極が使用されるようになった。(2)

 モリブデンが本用途に適する理由は、以下の通りである;
(a)良好な電気伝導率、(b)小さな熱膨張係数、(c)ガラスに対する耐腐食、耐エロージョン性、(d)ガラスに有害な影響を与えない、(e)加工性が良い。 
1970年代:  ピストンリングへの溶射材料として、モリブデンが使用された。鉄属金属のピストンリングの外周へモリブデンを溶射し、潤滑性を向上させている。溶射に際し、モリブデン線又はモリブデン粉として使用される。(2)
1970年代:  硬質材料の1種であるサーメットが、広く使用されるようになり、その原料の一つであるモリブデンカーバイドMo2Cの生産が増大した。


[参考文献・資料]


(1)”The history of development of Molybdenum alloys for structural applications”
J.Wadsworth, The minerals, Metals & Materials Society, 1994

(2)”Applications of Powder Metallurgy Molybdenum in the 1990s”

Edmund F. Baroch and George Patrick, Adv, Powder Metall 1991(vol5) p321-331,
JICST G92191886

(3)工業会会員各社技術資料

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