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技  術
   「高性能放電加工用電極材料「C-EDM」の紹介」 (第131会報)
日本タングステン株式会社
田中 智基
 1. はじめに
 放電加工とは、電極と被加工物(ワーク)との間にアーク放電を発生させることで、ワーク表面の一部を除去する機械加工の方法である。放電加工用電極の材質としては、一般的に銅やグラファイトが用いられている。しかし、これらの材質では電極消耗が激しく、電極形状が変化しやすい。そこで、高精度な加工が要求される場合には、電極消耗が少ない銅タングステンが使用されているが、さらに耐消耗性や加工速度に優れる放電加工用電極の要望が高まっている。本稿では、当社が開発した従来の銅タングステンよりも放電加工特性を向上させた新電極材料「C-EDM」について述べる。

 2. 高性能放電加工用電極「C-EDM」の紹介
 当社は、粉末冶金技術を応用して電極を製作している。粉末冶金とは、原材料となる粉末を成型、及び焼結することで単体や複合材料を造る製法である。放電加工用電極としての性能をコントロールできる高性能放電加工用電極を開発するにあたり、放電加工特性を決定する上で重要なファクターとなる、原材料のタングステン粉末粒径と、複合材料の組成における銅の割合を最適化した。さらに、電極の電子放射特性改善を目的に、仕事関数の低い微細な添加物を均一に分散させた放電加工用電極材料「C-EDM」を開発した。組織写真をFig.1 に示す。

     
        Fig.1  組織写真

 C-EDM の放電加工性能評価として、当社及び他社の放電加工用電極材料との荒加工における電極消耗率(%) 及びワークの加工速度(mm3/min) を比較した試験結果をFig.2 に示す。

    
     Fig.2 荒加工の 電極消耗( 左グラフ) 加工速度( 右グラフ) の比較

 C-EDM の電極消耗率は、一般的に使用されている銅タングステン電極(当社C30A2、C30H2、他社銅タングステンA,B,C)より少なく、さらに耐消耗性に優れている銀タングステン電極( 当社S35A2、S35H2) よりも少ない結果となった。また、ワークの加工速度に関しても、一般的に使用される銅タングステン電極や銀タングステン電極よりも速いという結果となった。なお、当試験のワークには超硬合金VM-30 種を用いたが、その他の超硬合金の材種を用いた試験においても、同様の結果が得られている。

 3. まとめ
 銅タングステンのタングステン粉末の粒径と複合材料組成における銅の割合を最適化し、さらに仕事関数の低い添加物を均一微細に分散させることで、低消耗で超硬ワークの加工速度が速い( ※当社調べ)新電極材料「C-EDM」の開発に成功した。C-EDM の採用により、電極使用本数の削減やワークの加工時間短縮など、コストダウンにつながる効果を得ることが期待できる。
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