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役員寄稿
  「曇り時々晴れか雪? 時々サクソフォン日和」 (第134会報)
アライドマテリアル株式会社
常務取締役 粉末合金事業部長
磯部  和孝

 富山の冬は、基本的に曇天が多いですが、昨今は突然の暴風雨や雹混じりの雪に見舞われたかと思えば、突如快晴になり青空の下の雄大で真っ白な立山連峰を望みながら食堂でお昼を食す幸せな時間に巡り合えたりと、富山での単身赴任生活を楽しんでいます。

 もう一つ単身赴任生活をさらに充実させるために、取り組んでいることに、サクソフォンレッスンがあります。社会人になって15 年目あたりで工場を預かることになって超多忙になり、通勤時間ももったいない感覚になってた40 歳、このまま仕事中心の人生のまま定年になってしまっていいのかと自問し始めていました。その頃、子供たちが楽器をやり始めていて、音楽音痴の私は家族の中でやや置いてきぼり感がありました。そんな折、妻が「何か楽器始める?何かやってみたいのはないの?」と言ってくれて、家族や仲間との合奏を将来の楽しみに、加えて老化防止のために指と肺にもいいかな、と思い、以前から憧れていた「サクソフォンをやってみようかな」と呟いてみました。しばらくしたら近所のレッス教室をいくつか見つけてきてくれて、「楽器は自分のお小遣いで買いなさい、続けるためには覚悟して初期投資が大事よ」と・・・( ◎ _ ◎ ;)。
   

 妻の遺伝のおかげで、子供たちは吹奏楽やバンドで楽器をそこそこ使いこなす、どころかどんどんうまくなっていくのですが、私は全く上達しない。それでもまだ小さかった子供たちを捕まえて彼らに伴奏させて人前で演奏したり、レッスン教室の企画では同じ生徒の皆さんとのアンサンブル(合奏)をしたりと、一人では目立つ未熟さを回りの人たちにカバーしてもらう工夫をしたりして楽しみが増えていきました。

 その最たるものが、「合同演奏会」でした。私たちの先生は他地区、他店も含め複数の教室をもっていたので、みんなで集まってご披露会をしよう ということになりました。準備は、各教室からの幹事が選出され何回も集合し(その集合もたまには街のスタジオを借りてプチ披露会って時もありました)カンカンガクガク。会場探し、プログラム作成、当日の飾り付け、演奏会後の(一番のお楽しみの)懇親会の段取り と、幹事は私も含め社会人だけでしたが、皆さん多忙の中、作業は持ち帰ってどんどん前向きに取組んだこともあって、本番は大盛況でした。私がサクソフォンを初めて10 年目のことです。
     

 この合同演奏会に対して先生から全員(生徒約50 名全員がサクソフォン!)での合奏を提案頂き、これもそれぞれの教室で事前にグループレッスンをしてきて、合同演奏会本番の最後で合わせたのですが、そのときの迫力はそれまでの段取りの苦労も吹っ飛ぶ大きな感激モノでした。また、私はこの時期に知ったジャズの曲をどうしても演奏したかったので、妻にピアノ伴奏の楽譜を書いてもらい、中一の息子に伴奏をしてもらいました。息子はその他にも伴奏CDの操作など裏方アシスタントとして活躍。面識のない年配の方々からもたくさん褒められとても気分が良かったとのこと。

 その後も転勤の度に新しい土地で新しい先生を見つけては習い続けてきています。ジャズのプロ・プレイヤーで定期収入のある会社員もしながらレッスン生をもっている方ばかりなので、なかなか個人的な事情とか大きな合奏イベントは難しい環境になっています(上述の先生は、やや事情が異なっていて、現役音大生時代からレッスン教室をもっていてそのまま各楽器店に所属するレッスンプロをされてました)。なので最近は、一人レッスンで1 年に1~2曲のゆっくりペースって感じやってます。

 実は私の最大の欠点は、指の動きとか息が続かないとかではなく、不安定なリズム感という音楽の基本的な部分です。一定のリズムを続けられないことに加えて、ジャズやブルース、ボサノバなど本来はスイング感と裏拍でかっこいいはずの楽曲なのですが、なぜか私は日本古来のリズム感と言われる、「ウサギのダンス」のリズムになってしまうのです。なかなか難関です。

 単身赴任の人は休日はどうしても出不精になりがちかと思います。運動がてらウォーキングにも出ますが、楽器持って、練習場所(富山ではこの種の公共の場が格安で借りられます)まで出かけて、プープー音を出すことが楽しみになってます。自分の練習小部屋を一歩出ると、たくさん並んだ小部屋のそれぞれの扉の前には行儀よく靴が並んでいるのが眼に入りここでは健全な子供たちが育っているなぁ、なんて感心して心が爽やかになったりしています。これが実は、雨の日だろうが雪の日だろうが、私にとってはうら暖かな晴れの日と同じくらい心穏やかになる、サクソフォン日和なのです。
   

 長く続けられている最大理由は最初のレッスン教室の雰囲気が良かったからと感謝しています。生徒がおっちゃん、おばちゃん、学生と様々で、個人レッスンの後にアンサンブル曲のグループレッスン、最後にティータイム(喫茶店がレッスン場所)がありました。様々な職業の人たちとのコミュニティでの会話がとにかく楽しかったです。新年を迎えた今、この居心地のいい空間の提供はそれが趣味だろうが仕事だろうが大切なことで、それがそのコミュニティを建設的に自主的に動かしていくんだなぁ、などとこれを書きながら改めて噛みしめています。
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