
日本新金属株式会社
製造部 林 寛之

【はじめに】
タングステン粉ならびにモリブデン粉は、液晶や半導体の配線、電極用のスパッタリングターゲット原料として用いられている。近年ではこれら単体金属よりもタングステン‐モリブデン合金(以下W/Mo合金)の薄膜の方が低抵抗である理由から、W/Mo合金ターゲットも利用されている。従来W/Mo合金ターゲット用原料にはタングステン粉とモリブデン粉の混合粉や、溶解法による合金粉が使用されているが、これら製法では不均一固溶、不純物混入、粗大組織といったスパッタリングターゲットとして好ましくない特性発現が懸念される。当社ではさらに高性能なスパッタリングターゲット用原料として、微細、均質、かつ高純度のW/Mo合金粉を開発したので報告する。
【実験方法】
タングステンとモリブデンのアンモニウム塩溶液を用い、各々W/Mo(wt比)が30/70、50/50、70/30の混合溶液を調整し、これをスプレードライヤーで噴霧乾燥して混合アンモニウム塩の前駆体を得た。この前駆体を空気中でか焼した後、600℃〜900℃で水素還元処理を行った。得られたW/Mo合金粉は、ICP発光分析による定量分析、赤外線吸収法による酸素分析、SEM観察、EDX分析、XRD定性分析、ならびに格子定数測定を行った。さらにホットプレスによる焼結試験を行ない、密度等を評価した。
【結果】
還元粉の定量分析の結果、タングステン、モリブデンの組成は出発原料である混合液組成と同組成であった。XRD測定結果を図1に示す。

図1 W/Mo合金粉XRDプロファイル
いずれの組成でも体心立方晶一相が得られ、Mo組成比が増加するにつれピークが高角度側にシフトした。格子定数測定の結果、3組成の値がVegardの法則に従い、完全固溶が確認された。EDXのマッピング分析結果を図2に示す。タングステン、モリブデンの均一な濃度分布が観察された。

図2 W/Mo合金粉EDX結果
W/Mo合金粉焼結体は従来混合粉焼結体と比較して均一固溶、均質微細組織であった。密度をアルキメデス法で測定したところ、従来混合粉焼結体では97.42%であったが、本合金粉焼結体では99.76%の高密度となった。よって、本合金粉を原料として使用し、スパッタリングターゲットを作製した場合、その特性向上が期待される。
【その後進展】
W/Mo組成は全範囲で対応可能、合金粉粒度は0.5mから10mまでコントロールが可能となった。酸素値が200ppm以下の粉末も得られており、顧客の要望に柔軟に応えられる態勢が整っている。