
松下電器産業株式社 照明社
谷脇 達也
1.背 景
電球形蛍光灯は、電球から手軽に交換できる省エネ商品として、国内総需要は増加の一途にあり、2006年度は2300万個を超える規模で前年比約106%の伸びが見込まれる。普及に伴っては、「さらなる長寿命」、「さらなる省電力」といった市場ニーズが高まっており、同時に近年では、ランプサイズのコンパクト指向が高まり、発光管の細管化が至極の事態となっている。
電球形蛍光灯の寿命は電極コイルに塗布する電子放射物質(以下エミッタ)の充填量によって左右するが、その充填量増加策としては、エミッタ塗布部の寸法長尺化と断面積の増加が一般的な手法となる。しかし、電極コイルにとって、発光管内径の細管化および螺旋形状に加工された発光管に対しては、長尺化および面積の増加と電極特性を合わせ込むために必要となるタングステン線材の長さ(以下タングステン線UCL)の確保をも困難にするものとなった。
2.本 論
今回の新構造4重巻きでは、加工負荷を軽減した細線加工技術を用い、従来3重巻きのデッドスペースであった部分を有効化することで、エミッタ塗布部の有効面積の拡張を図り、図1に示す制限された寸法範囲のなかでのエミッタ充填量増の実現とタングステン線UCLを確保したことを特徴としている
図ー1
これまでの3重巻きにおけるエミッタ充填量増に対する具体的な考え方としては、まず、エミッタ塗布部寸法の長尺化では、コイルの外径方向または全長方向への拡張、すなわち、最大径を大きく,巻き数を多く設計することでの対応が一般的な手法となり、断面積増による対応では、タングステン線およびコイルドワイヤーの巻き線加工における線軸、つまり、芯線(MD1,2)の断面積増に依存する形となる。したがって、エミッタ充填量増を実現するためには、どちらの対応にしても電極コイル自体のサイズ拡張(大化)が必要となった。また、上記手法によるタングステン線UCLの延長は比例的に電気抵抗に関与し、電極特性とのマッチングを達成するためには、巻き線間隔および主タングステン線の関係(L,Da)を調節することで吸収し、適切な抵抗値に落とし込むことが重要なポイントとなる。しかし、この調節は基本設計とエミッタ充填量を維持した状態で行わなければならないため、対応策としては断面積の変化に影響の少ない巻き線間隔(P2)を大きく設計する手法で吸収し、バランスをとることが中心となった。
その結果、巻き線間隔が大きくなった電極コイルはコイル同士のカラミ等の実用上の問題をも誘発するものとなり、3重巻きでの対応を不可能にするものとなった。
これらの背景から、3重巻きコイルドワイヤーを更に巻き線加工することで、電極コイルのコンパクト化と従来デッドスペースとなっていた3次巻きにおける中空部分にエミッタを保持させることによる充填量増を狙いとして4重巻きコイルの開発を進めた。

3. まとめ
4重巻きコイル開発においては、従来3重巻きのデッドスペースであった部分を有効活用したことで、制限された寸法範囲のなかにおけるエミッタ充填量増(従来比150%増)と電極特性とのマッチングを達成するとともに、発光管の細管化ニーズに対応したコンパクトな電極コイルの開発を実現した。
2006年10月発売の電球形蛍光灯パルックボールプレミア(電球60形タイプ A15形)には、この新4重コイルが採用され、ランプ設計技術とのマッチングにより長寿命化実現(定格1万時間)を成しえた。
