「四川雑感」

株式会社アライドマテリアル
専務取締役 塚原 一郎

 成都は中国南西部の四川省の省都ですが、まず「四川」と聞いて思い浮かべるのは「パンダの故郷」「激辛の四川料理」そして「三国志でおなじみの劉備玄徳や諸葛孔明がたてた蜀の都」と中国の中でも身近なイメージを抱くことが出来る場所、いや、中国のイメージそのものと言えるかもしれません。

 天府の国と呼ばれてきた肥沃な四川盆地の中心にあるのが成都であり、気候は山奥のイメージのわりに温暖(夏はかなり暑い)で緯度は上海と同じくらいである。町の歴史は古く2500年前にはすでに城壁で囲まれた大規模な町が造られていた。現在は中国西南エリアの商業、貿易、金融、農業の中心地であり、郊外の西北部には紀元前3世紀に建設された水利灌漑施設である「都江堰」、中国民間宗教である道教の聖地「青城山」がある。

 また南に行けば中国四大仏教名山の一つ「峨眉山」があり山中には多くの古刹が残り、標高3099mの山頂から眺める雲海をはじめ神秘的な風景でも有名。その東にある楽山は岸壁に造られた高さ71mの仏像が有名で、それぞれ世界文化遺産に登録されている。

 更に足をのばして行き北部青海省の近くには標高3000mの高地に九寨溝(ジウジャイゴウ)や黄龍(ホアンロン)といった景勝地が世界自然遺産に登録されていて、近年ルートも整備され国内外から多くの観光客が訪れている。私も最近仕事の関係で成都には、時々足を運ぶようになったこともあり、いくつかの名所をご紹介する。


武侯祠博物館(ぶこうしはくぶつかん)
 市中心から南西にある三国志で有名な蜀の丞相諸葛亮(孔明)と主君である劉備を祀った祠堂。周囲を赤い壁で囲まれ、西晋時代の末期(4世紀初め)に建てられ1700年の歴史がある。初めは孔明だけを祀っていたが明の時代に劉備を祀った漢昭烈廟と合体したそうで、君主と家臣を一緒に祀った中国でも珍しいのだそうだ。劉備殿と諸葛亮殿の間に三国志ゆかりの史料が展示されていて、非常に興味深い。

 正門を出て東に行くと錦里という食堂街があり、四川名物のシャオチーが食べられる。土産物を売る店も多く、一番人気は、劉備に従い孔明とともに活躍した蜀の五虎大将軍と呼ばれた関羽・張飛・黄忠・超雲・馬超の人形やお面で、縁起物としてよく売れているらしい。また、諸葛孔明と言えばトレードマークの孔雀の羽根の扇「孔明扇」という「うちわ」を売っていた。同行していた部下が話のネタにと購入したが、複数の中国人観光客に「何処で買えるのか、是非教えて」と尋ねられ、得意げに案内していたことを思い出した。
  孔明扇


成都パンダ繁育研究基地
 絶滅が危惧される稀少動物の保護・繁殖・生態研究のために設立されたもので、市中心から15kmほど離れた北部外斧頭山にある。特にジャイアントパンダは自然に近い環境におかれ、日夜研究・繁育に取り組んでいる。その他レッサーパンダ、黒鳥、タンチョウヅルなども飼育されている。目玉はやはりパンダで、ここでは保育器に入った赤ちゃんパンダや子供パンダを間近に見ることが出来る。成都に行かれることがあればぜひ訪ねて頂きたい。

 さすがに一千万都市なので市中心は高層ビルも多く、繁華街は夜遅くまで賑わいをみせている。ただ、武侯祠博物館と道を隔てた一帯はチベット人居住区らしく、夕方になるとものすごい数のパトカーがやってきて道路を封鎖し検問をやっていて興ざめした。
さて、おなじみ四川料理だが、なんでもかんでも辛い訳ではないので誤解のないように。されど辛いものは恐ろしく辛く、まさに舌が痺れて味がわからなくなってしまうものも多い。

 先日街の火鍋を食べさせる店に招待されたが、大きな鍋の中に小さな鍋が入っていてその透明なスープは辛くないが、その外側はどす黒く、かき混ぜると大量の唐辛子と粒胡椒が沈んでいることがわかった。勇気をだして出てきた具材を鍋に放り込み、手探りでつかみ出し口に入れたが、それほど激辛でもなくパクパク食べていると、現地の招待主が「辛くないのか?」と訪ねるので、「それほどでも」と答えると、ちょっと残念そうに「今のはレベル2だから」と言い、給仕に何やら指示をしていた。

 やがて持って来たのは大皿一杯の唐辛子だった。これを全部鍋に投入し、「さあどうぞ、おいしくなりました」とうながされ具材を口にした瞬間、脳天に突き刺さると言おうか表現の出来ないことになった。体中から汗がどっと吹き出る感じがわかる。二口目はもう勘弁してもらい、その後はおとなしく真ん中の透明なスープでおいしく頂いた。

 帰り際、まわりのテーブルを見ると黒いスープだけの鍋を皆おいしそうに突いていた。日本人がいたので今回は辛さを加減してくれていたのだった。あまり粋がるものではないと反省。

 四川省並びに周辺地域では5月の大地震によって非常に多くの犠牲者が出るという痛ましい大災害があったばかりだが、前へ出ようとする四川人のエネルギ−はすさまじく、早い立ち直りは疑うべくも無い。鎮魂と復興を心よりお祈りして筆を置きたいと思います。

 

以上